剃毛回顧

 2014年2月11日。
この日まで僕は、いや僕たちは平和に暮らしていた。
時たま湿度が尋常でなくなるし、1日に最低一回は界面活性の効果を受けたりするものの、それ以外は至って快適な、大きくくぼんだ地形の中で。平和だった。
しかし、それは突然やってきた。
青と黒の異形が。
僕らの日常を破壊しに。

 その、鈍く光る刃は、何枚にも連なった死神は、僕の仲間の命を、次々と奪っていった。
夢があった。
死んでいった仲間にも、未来があった。
それなのに、彼らは死んでいった。
その刃に絡め取られ、次々と望まぬ終わりを迎えていった。

 ひと通りの、一方的で圧倒的な殺戮は、終わりを迎えたかのように思えた。
しかし、まだ悲劇は始まったに過ぎなかった。
普段ならば1回で済む、猛烈な界面活性。
それが、何故か再び行われた。
そして疑問を抱く暇など与えず、再び死神はやってきた。
一度は難を逃れた友人も、儚く散っていった。
あまりの恐怖と理不尽に、体が縮こまった。

 その蹂躙は、始まった時と同じように、突然、終わりを迎えた。
後に訪れた濁流の渦に飲まれ、仲間の死骸を押し流していった。
何も、残らなかったように思われた。
かつて地を埋め尽くしていた仲間は、今や地形によって難を逃れた数名を残すばかりだった。

それからもう1年が経つ。
一度は荒れた地肌を晒すばかりだった大地も、今や新たな仲間たちによってうめつくされている。
それでも僕は、忘れない。
そして、絶対に許さない。



カミソリという悪魔を。